社長からたまに質問があるシリーズ。
「一時的に資金繰りが悪くなったため、
役員報酬をそのまま運転資金に回してもいいですか?」
中小企業ではこのようなケースは非常に多いです。
対象者は社長もしくは社長の奥さんのケースがほとんど。
さすがに役員とはいえ他人様にこのようなお願いをすると
「えっ、この会社大丈夫・・・?」
となりますからね。
役員報酬を運転資金に回すことはよく短期借入金で処理をします。
よく処理をするということはもちろん税法上認められているからです。
ただし注意が必要。
役員報酬には定期同額給与という法人税法上の大前提があります。
定期同額給与とは読んで字のごとくですが、
役員については、定期的に、同額の報酬を支給する必要があります。
この大前提を守りつつ処理をするには以下のようなパターンがあります。
パターン1 役員報酬をいったんその役員に対して支給し、法人が役員からお金を借りる
まぁ考えてみたら普通の処理です。
通常通り役員報酬を支給し、
必要な分のお金を借りることになります。
実際のお金の動きが生じます。
パターン2 役員報酬を帳簿上のみで処理をし、実際にお金を支給しない
「お金渡さないのに定期同額給与なの?」
と言われてしまいそうです。
このような処理は税理士の勉強では習わないので、
私も実務に就いて初めて知りました。
お金を支給しないで帳簿上で、
「短期借入金」もしくは「未払金」で処理をします。
パターン1との大きな違いはお金を動かさないところですね。
その分面倒は少ないです。
そして資金繰りが良くなったらその役員にお金を返して、
短期借入金もしくは未払金を無くすようにしましょう。
源泉徴収
ここで忘れてはならないのが、
源泉徴収です。
パターン1の場合は一度支給しますので、
通常通り源泉徴収はすると思いますが、
特にパターン2のケースです。
実際にお金を支給しないからといって
源泉徴収を忘れてはなりません。
そのため通常の手取り額が
短期借入金もしくは未払金になるイメージです。
まとめ
役員報酬については税務調査でも大注目点の一つです。
そして役員報酬は否認されやすい科目です。
過去に遡って否認されると、
合計額では大変なことになることもあります。
それは定期同額給与という前提があるため
毎月同額にしなくてはいけないとか、
金額の変更が基本的に年一回だとか、
色々と制約があるため、争点になることが多いです。
誤りが多い箇所でもあるので、正しい処理をして
余計な誤解を与えられないように普段から注意をしましょう。