こんにちは、池袋の開業税理士、竹田健司です。
今回は個人事業主の自家消費について。
というのも、この仕事をやっていると、
お客様の会社に訪問する際に、
そのお店の商品をもらうことが結構あります。
こういう好意って、人の温かみを感じて凄く嬉しい!
この仕事の醍醐味です。
しかし!我々は税理士。
その際にしっかりとした会計処理のご指導をしなければなりません。
自家消費を収入計上
商品を自分たちで食べたりする行為や、
知り合いにあげる行為は自家消費(家事消費)と呼ばれます。
こういった行為については、収入に計上しなければなりません。
所得税法において
「棚卸資産を家事のために消費した場合には、
その消費した時におけるこれらの資産の価額に相当する金額は、
その消費した日の属する年分の事業所得等の金額の計算上、
総収入金額に算入する」
ということは、仕入金額と相殺されますので、
「費用をなかったことにして下さい。」
というようなものです。
なんとも細く、そして厳しい処置ですよね・・・。
収入計上額は仕入金額または定価の70%のいずれか高い方
少なくとも仕入金額以上で収入計上しなければならないため、
やはり「費用としては認めないよ!」という感じです。
考え方としては、仮に飲食店をやっていて、
お店で調達した材料で夜食を作って食べていたとすると、
自分の家で食べるためスーパーで買った食料品を
経費にしていると同じことなので、確かに認められないのは納得。
税務調査で調べられます
「しっかり処理をしないとどこでバレる?」
「申告書からはわからないよね?」
と考えるところでもありますが、
それが明るみになるのは税務調査です。
個人事業主への調査の場合には、自家消費についても調べられます。
もちろん調査官の人数や日程、
また会社規模等で調べる内容は変わりますが、
棚卸との照合をしたりすることによって、しっかり指摘を受けます。
正直言って、例えば来客があり、
その打ち合わせ時にお店の飲み物を出すことや、
軽食(お店のお菓子など)を出す程度であれば、
交際費の一環とも考えられますし、
そこまで厳密に処理をしていなかったとしても、
お咎め無しになる可能性は高いと思います。
しかし、これが毎日あるような業態であれば
しっかりとした処理は必要になりますが、
月に数回程度で金額も多くなければ、
個人的には、そこまで目くじらをたてるほどではないと思います。
役務提供は処理しなくてOK
役務提供とはサービスのことです。
例を挙げると、
個人事業主である美容室経営者が、
家族の髪を切ったとしても、収入に計上する必要はありません。
個人事業主自身には給与という概念がないので、
費用は発生しないため相殺する必要はないという考えからでしょうか。
そもそも、物がなければその事実がわからないので
調べようもないですしね。
消費税の考え方
自家消費については消費税についても考える必要があります。
また取扱方が棚卸資産か、そうでないかで変わります。
棚卸資産・・・仕入金額又は通常販売金額×50% のいずれか高い方が資産の譲渡とみなされ、 課税売上を計算する。 棚卸資産以外・・・譲渡時の価額(時価)が資産の譲渡とみなされ、 課税売上を計算する。
少し複雑ですね。
まぁ、棚卸資産については所得税法上において計算した金額を
そのまま課税売上にしておくパターンが多い気がします。
処理が簡単ですからね。
実務における仕訳
実務的なことを言うと、個人事業主においては、
ほとんどの方が消費税の処理は税込経理でしょう。
実は上記の所得税法と消費税法を踏まえて、
税込経理において完全な仕訳を考えると、
とてつもなく複雑になります(汗)。
税抜経理の方が考え方はわかりやすいですが、
それでもかなり複雑になります。
そのため、消費税法上では多少の誤差が出る(基本的に納税者不利)
こととなりますが、所得税法に合わせて、
実務では下記のような仕訳をするのが現実的となります。
仕入・・・100円 売価・・・150円 商品であるアイスを自家消費した。
150円×70%=105円 > 100円
→「105円の方が高い!」
事業主貸 105 / 売上 105
簡便的ですが、このように処理をするのがいいでしょう。
ほとんどの方が会計ソフトを使うと思います。
そのため、本来なら所得税法と消費税法のズレを
課税分、不課税分で分ける必要が出てきますが、
非常に煩雑になってしまいます。
とは言っても、金額が大きくなる場合には
正式な計算でやるべきだとは思います。
まとめ
自家消費については、
軽く考えがちな個人事業主の方がいるかもしれませんが、
それを日常的に行なっており、
しっかりと収入計上していない場合、
まとまったらかなりの金額になることもあるでしょう。
そのような状態で税務調査が来た場合、
かなりの税金を納めることになります。
調査官はその道のプロです。
「どうせわからないでしょう・・・?」
と考えていれば、あとで痛い目をみるかもしれません。
そうならないためにも、
普段から正確な会計処理をするよう心がけましょう。