30万円未満の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の注意点

皆さん、こんにちは。

池袋の開業税理士、竹田健司です。

個人事業主や会社経営者さんで、

「30万円未満のものは全部経費」

と覚えている方は割と多いと思います。

間違ってはいないですが、

注意が必要です。

 

中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

中小企業者等が、

取得価額が30万円未満である減価償却資産を

平成18年4月1日から

平成32年(2020年)3月31日までの間に

取得などして事業の用に供した場合には、

一定の要件のもとに、

その取得価額に相当する金額を

損金の額に算入することができます。

国税庁HPより

 

注意すべき事項

注意1 青色申告書の提出を行う中小企業者等

注意2 税込経理の場合は税込で判定

注意3 年300万円以内まで

注意4 別表16(7)の添付が必須

 

注意1 青色申告書の提出を行う中小企業者等

中小企業者等については、

実は細かい要件があります。

似ている言葉で

中小法人等がありますが、

厳密に言うと違う意味となります。

中小企業者等とは

①資本金の額が1億円以下。

②中小企業者等以外の法人(=大規模法人)に

発行済株式の2分の1以上を

直接所有されていない。

③2以上の大規模法人に

発行済株式の3分の2以上を

直接所有されていない。

上記全てを満たす法人を言います。

簡単に言うと、

資本金1億円以上で、

大法人の子会社でなければOK。

また青色申告書の提出を行なっていることが

要件となります。

正直、税理士に依頼していれば、

法人の場合、

青色申告の承認申請書は提出しますので、

気にするまでもないですが、

一番多いのが、

設立1期目で決算になったら

税理士に頼もうと思っていたため、

青色申告の承認申請をしておらず、

期限が過ぎてしまったため、

1期目は白色申告になってしまった。

これは、相当多い事例です。

この場合、今回紹介した

30万円未満の少額減価償却資産もそうですが、

何より厳しいのが繰越欠損金の繰越控除が

使えないことです。

1期目は赤字になる会社が多いですが、

その赤字を繰り越せないということは、

その分の経費を捨てるのと同じこと。

こういうケースは本当によく見るので、

最初から税理士に頼む重要性を感じます。

 

注意2 税込経理の場合は税込で判定

意外に忘れられがちなのですが、

その会社の経理が税込経理か税抜経理かにより、

判定の仕方が変わります。

例えば税抜き298,000円、税込321,840円

のパソコンを購入したとします。

払う金額は当然消費税8%を含めた

税込の321,840円となります。

これが経理方法が税込経理の場合は、

当該特例の判定は税込の321,840円で行うため、

30万円以上となり、当該特例は使えません。

しかし、これが

税抜経理で処理している会社であれば、

判定は税抜の298,000円となるため、

30万円未満となり、

当該特例を適用できるのです。

そういう意味では、

税抜経理を行なっている会社の方が、

この特例のみを考えると有利となります。

ただし、税抜経理は

そういったメリットがあったとしても、

処理が煩雑になるため、

中小企業では採用する会社は少ないですね。

 

注意3 年300万円以内まで

これも結構忘れられがちな要件です。

年とありますが、

法人の場合は事業年度が単位となります。

この特例は年間合計で300万円以内しか

使用することはできません。

25万円の資産のみを

買った会社があったとすれば、

12台までしか当該特例は認められず、

13台目以降は通常の減価償却計算となります。

税理士でも忘れがちな要件です。

忘れがちな理由としては、

300万円を超える例がほとんどないためです。

普通の中小企業であれば、

年間300万円以内に収まるのが一般的。

よって考えるまでもないのですが、

例えばその年に新店舗を出して、

内装を整えたり、大量の器具備品を購入した、

そのようなことがあると、

細かく当該特例を適用していくと、

年300万円以内では収まらないこともあります。

私も一度経験しましたね。

よって30万円未満であれば、

必ず経費になると考えていると、

足元をすくわれてしまいますね。

また、新規開業の一年目など、

事業年度が1年に満たない場合には、

月割り計算をして300万円を調整する

必要があることにも注意です。

 

注意4 法人は別表16(7)の添付が必須

個人事業主の場合には、

取得価額に関する明細書

(取得価額、資産名、日付、合計額を

記載した任意様式のもの)

を帳簿と一緒に保管する義務があります。

法人の場合には

別表16(7)を提出する義務があります。

税理士に依頼している場合には、

通常作成してもらえると思います。

しかし、以前こんなことがありました。

新規のお客様の税務調査に立ち会いました。

新規のお客様なので、

申告書を作成したのは別の税理士さんです。

その方は、別表16(7)を申告書に添付しておらず、

30万円未満の資産を、

そのまま消耗品にするような処理を

されているようでした。

結果的には同じことなので、

そのような処理をしてしまう

気持ちもわかりますし、

やっている税理士さんは意外に多いかも。

ただし、その税務調査では、

しっかり否認されてしまいました。

これは弁明の余地はないですね

(自分がやったわけではないですし笑)。

このように、30万円未満の資産を

経費で落とせると思っていると、

足元をすくわれる、そんな事例でした。

 

まとめ

中小企業者等の少額減価償却資産の

取得価額の損金算入の特例について、

注意点を記載しました。

わりと30万円未満だと経費で落とせる、

そのように思っている方が意外に多いので、

様々な要件に注意する必要があります。

また周辺の税法には

取得価額が20万円未満の資産を

3年間で均等償却できる一括償却資産

取得価額10万円未満の資産を

経費にできる少額減価償却資産など、

紛らわしいものが多いので、

その要件に当てはめ、

適切な税法を適用しないと、

足元をすくわれることになるかと思います。

take(テイク)会計事務所 竹田健司税理士事務所 代表税理士・MBA 竹田健司 さいたま市職員時代に税理士試験に合格し、 税理士となった異色の経歴。 また、勤務税理士時代に、ビジネススクールに通い、 首席で卒業。 そのMBAの取得をきっかけに 東京都豊島区池袋にて税理士事務所を開業。 ビジネススクールにて 一番の研究テーマであった飲食店のマーケティングにより、 コストをかけないで儲かる仕組みづくりを飲食店に提供。 それにより、開業より順調に顧問先を増やしている。